水無瀬亜きらは人の多いところ、五月蝿いところ、暑いところが苦手である。

それらの排除された自然を体感することが、何より愛しい。というより、自然である。生き物として。

雨の降る鴨川を走っていて、ふと足をゆるめ歩いた。
水嵩の増えた川の流れる水の音、虫や蛙の鳴き声、風に揺れた木々のざわめき。
雨に濡れた肌、そうして自然と渾然一体となれそうな、あの感覚が愛しい。
まるで地球と繋がれた気になる。早く自然と一体化したい。

とは言え一体化するとするならば、この体なのか。体なんぞは所詮容れ物で、そこに宿る精神が私本体なのだとするならば、精神を構築する思考、意思、感情、欲求を司るのは脳であるから、自然と一体化するのは脳そのもののはずである。
脳内に自然が溶け込むような、自然に思考が溶けていくような。

そんなことを考えていた。
その考えが横道にそれて、今日見つけたミノガの毛虫、つまり蓑虫を思い出していた。
少し前の一時期、私は見つけた青虫や毛虫を写真に撮してはSNSにあげていた。
彼らのフォルムや愛嬌あるくねくねした歩みと、ともすれば車道にのそのそ現れる姿に生そのものを感じることが好きだった。
私のSNSを見ていた一人の彼女は、似たような青虫や毛虫を見つけると私に写真を添えてメッセージしてくれていた。

「好きそうなのいたよ」

彼女が私と似たような、日常で青虫や毛虫を見つける視線を持っていたことが愛しかった。
例え青虫を目に留めても別段注視することなく通り過ぎる人が多勢のなかで、例えもし彼女がその多勢の人間だったにせよ、私のSNSを見ることによって青虫に気を留めるようになったのであれば、それはなおさら彼女を愛しくさせた。

蓑虫を見つけたとき、私は心から嬉しかった。自然を侵すコンクリートのなかで見つけたこと、彼女にまつわる物語を思い出したこと。

意味や意義や理由なんてものは、後からどうとでも繕える。
そのために言葉を弄するなんていとも容易い。
脳から発せられるのは理由ではなく、欲求そのものであり、己の欲を嘘偽りなく掴むことができ、またそれを逃さぬようぼやけさせぬよう生きていたい。

あなたはどうしたい?
なぜ?
私は支配していたい。
なぜかは、今はどうでもいい。


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私がAIに描いてもらったもの。




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