皐月という美しい呼称があるにも関わらず、五月と言えば五月病。
五月と聞けばその一語が脳裏に浮かび、また調子が良くないと五月病だと思う。

私に言わせれば春の憂鬱から続く決定的な気分の浮き沈みに過ぎないのだが、実は今年の春はほんとうに気分が優れなかった。
仕事や生きている環境や私に連なる諸々すべては順調で、むしろ春の陽光に照らされ目映いばかりだったと言うのに、私の本質的なところはじめじめと暗く湿度をあげていた。

それを五月病だと言うつもりは全くない。全くないが、人々はそう呼ぶのだろう。
むしろ春に気が塞ぐ私は五月に入り新緑の瑞々しさを目にすると、生命の沸き立つエネルギーを分け与えられる身だ。
それが今年はあまり奮わなかった。
どんどん自分の内へ、内奥へ、下降していく私の意思。
それならいっそ床にシーツに寝そべり沈んでいたい。

そんな雑念を払拭したくて、まれに他人を傷つける。私の暴力に耐える人間達の姿はとても愛しい。
私がここにいる必要性が明確に明彩に暗に語られる。
つまり一つだけ言いたいこと。
今読んできた文章など忘れていい。

ただ私は君臨していたい。
以上。


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