職人さんが、鉋を手になんらかの作業してる姿が目に入った。
元より好きなのだ。
料理人であれ大工であれ、職人さばきの姿を見る行為が。

ここでよく発生しがちな事、それは他者から「見られている」という意識の下に当人が動いてしまう事。
自然体の職人の手が、見られている条件によって少しの変化を伴う。

さて、鉋を用いて作業中の職人さんをしばし眺めたあと声をかけてみた。
「こんにちは。作業姿を少し見ていたいのですが構いませんか?」
彼は笑顔で言う。
「どうぞどうぞ、なんぼでも。」

鉋で削られ落ちていく木片や集中する彼の背中、を見ていたかったのに、やはりこちらを『見る者』として意識してしまうようだった。

「京都の人?」だの、私に話しかけてくるのだ。
悲しいかな、早々と私は会話を切り上げ「お邪魔しました、ありがとうございました。」とその場を去った。

帰り道へと坂を下り振り返ると、当の職人さんの作業する姿が遠くに見える。

真夏の痛いほどの青空と生い茂る緑を背景に、某かを修繕するため手を施す職人の姿がそこにあった。
美しかった。

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図らずとも顕現的な観察に至ったようで、私はいたく感動したのだった。





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